TOPPAN株式会社 様

ARRKでは、TOPPAN様の「ダブルビュー®フィルム」を用いて、車載ディスプレイの展示会用モックアップを製作いたしました。

TOPPAN様は、1900年に創業した日本の大手印刷会社で、情報コミュニケーション、生活・産業、エレクトロニクスの3つの主要事業分野で活動しており、従来の印刷に加え、エレクトロニクス、パッケージング、セキュリティ、マーケティングなどの多岐にわたるソリューションを提供しています。

TOPPAN様コーポレートサイトはこちら
https://www.toppan.com/ja/

製作したモデルに搭載したTOPPAN様の「ダブルビュー®フィルム」は、ディスプレイ画面への加飾と、鮮明な映像表示を両立させた特殊な化粧シートで、建装材事業で培った木目などの表現技術を進化させた透過加飾技術を使用しています。特殊な印刷技術により、インテリアと調和するスマートなディスプレイ表示が可能となり、例えば車であればカーナビゲーションなどの情報を内装デザインを損なわずに表示できます。視聴者にはインストルメントパネルから映像が浮かび上がるような先進的な体験を提供します。

「ダブルビュー®フィルム」のご紹介ページはこちら
https://forest.toppan.com/products/double-view-mobility.html

1.漠然としたイメージからデザインを起こす、コンセプト設計力

2023年1月、米国ラスベガスのCES(Consumer Electronics Show)でARRKが製作した、とあるメーカー様向けモックアップが高評価を得たことが、本案件の発端となりました。そのメーカー様からのご紹介により、TOPPAN様とARRKのプロジェクトが始まりました。

TOPPAN様は、独自開発の「ダブルビュー®フィルム」を用いた車載ディスプレイの展示会用モックアップ製作を希望されていました。このモックアップは、車の前方部(インパネ、フロントシート)を再現し、インパネ部分に「ダブルビュー®フィルム」を組み込む計画です。

過去のCESに出展されたモデルを参考に、モックアップ製作のプロセスや進め方についてARRKに相談してくださり、このたび指名発注をいただきました。TOPPAN様とARRKは過去に別案件での取引実績がありましたが、デザインや設計から製造までを一貫して担当する本格的なものづくりのプロジェクトは今回が初めてとなります。

コンセプトの設計から製作までを一連で提案

初期段階では、TOPPAN様から概略的なイメージ、いわばラフ案をいただきました。参考となる、車のイメージ写真を元に「このようなインパネを製作したい」といった大まかな指示からプロジェクトが始動しました。また同時に、「ダブルビュー®フィルム」の使用方法と展示イメージについての方向性もいただきました。

これを基に、ARRKはコンセプト段階から製作までの一連を実施します。当プロジェクトは以下のフローで進行しました。

1.デザイン提案
2.デザインデータの作成
3.詳細設計
4.製造

スムーズに進んだデザインの初回提案

ダブルビューフィルム_初期提案01_デザインスケッチ

初期提案 01

ダブルビューフィルム_初期提案02_デザインスケッチ

初期提案 02

メーターグラフィック

デザイン提案前に、ARRKのショールームにてインパネのデザインモデルをTOPPAN様に御覧いただき、ボリューム感や使用素材、インパネ製作に関する具体的な提案、レザー素材の活用や塗装技術、光の演出など詳細についても議論させていただきました。その後、アイデアスケッチを元に「ダブルビュー® フィルム」の曲げ方向や、造形テイストの異なる2つの案を提案いたしました。

採用されたデザインはエレガンスさをコンセプトとしており、流麗な曲面が柔らかな印象を与え、「ダブルビュー® フィルム」の木目の温かみを引き立てます。

提案内容に対してTOPPAN様からは、展示会場での照明の影響を考慮した天面部分の変更や、ライティング(照明)の導入等、フィルムの特性を考慮したデザイン調整のフィードバックをいただき、その後2回程度の改訂で最終のスタイリングデザインが確定しました。完成に向けてメーターのグラフィックデザインや、センターコンソールのアイコンデザイン、タッチ操作のフローなどもデザインチームより提案しております。カラーリングやマテリアル、表面処理もTOPPAN様と議論を重ねて決定し、完成度の高いデザインを共創することが出来ました。

Voice

お客様とARRK担当者からのコメントをご紹介します。

お客様より
当初2案を提示していただきました。デザイン案はとても素晴らしく、どちらを選ぶか悩むほど両案とも気に入りました。最終的には木目が多く流線形で、フィルムがより際立つ形状に決定しました。

担当者より
デザイン選定のプロセスは、予想以上にスムーズに進行し、最初にお見せしたデザイン案が非常に好評だったことが印象的でした。提案したデザインに満足していただき、大変嬉しく思います。

2.長年のものづくりで培った、確実な設計力と製造力

ご要望をしっかりと把握した上での詳細設計

設計の工程では、デザインデータをもとに製造側で詳細な設計を行います。そこで、使用する材料の選定、組立方法、最終的な仕上がりに至るまでの工程を規定します。TOPPAN様の展示意向やデザイナーの意図を十分に理解した上で、それらを忠実かつ確実に実現するために、製造側の設計チームで部材選定や構造設計を進めます。

TOPPAN様の要望は、基本的には車のインパネのデザインでありながら、現在主流の車とは一線を画すものでした。スケッチにもあったように、むしろ家具やインテリアのような、居心地の良いインパネが求められました。この「移動空間を快適に過ごすためのインテリア」という要望に応えるため、設計過程でレザーの選択や塗装方法などを慎重に決定していきます。

インテリア風のデザインではありましたが、私たちは車のものづくりに精通したチームです。そのため、構造設計自体では通常のノウハウを活かして進めることができ、大きな問題は生じませんでした。しかし、「ダブルビュー®フィルム」を液晶パネルで鮮明に表示させる部分は非常に難しく、サンプル作成と検証を繰り返し、TOPPAN様に確認いただきながら進めました。見え方の良さや改善点について議論を重ね、最終的に商材を最適な形で展示できるようにしました。

車のものづくり技術を活かした設計力

ARRKの車関連の豊富な設計実績とノウハウを持つという強みを今回の案件でも発揮します。「ダブルビュー®フィルム」は初めて扱う特殊な材料ですが、レザーやファブリックの使用、塗装技術、光の演出などにおいては、車の製造で培ってきた経験が大いに役立ちました。

このノウハウを基に、TOPPAN様に対して「この材料を使用すれば、このような効果的な展示が可能です」といった具体的な提案ができたことが、大きな強みです。

製造段階に関しては、液晶に透明パネルを取り付けるという特殊作業がありましたが、それ以外に大きな課題はありませんでした。これは、事前の段階で細部まで綿密に設計していたからこそ、実際の製造では忠実な設計の再現に集中できたためです。

製造技術を要するレザーの巻き込みの実現

このデザインにおいて、製造の観点から特に難しいと感じた点は、レザーの巻き込み処理です。全体が一枚の面で構成されているように見えますが、実際には分割ラインが必要となります。これらの分割ラインの配置に関しては、社内でも協議し、「この位置にラインを入れても問題ないか」といった具体的な検討を重ねました。

木目部分の巻き込みに関しては、内側に力がかかり伸びにくい箇所があるため、特に慎重に対応しました。ハンドル部分も同様で、レザーを巻き込み、上部に蓋をするような構造を採用しています。この蓋の部分も技術的に難しい点でしたが、車両製造のノウハウを活かすことで適切に対処できました。

透明性を持ったプロジェクトの進め方

プロジェクト全体の進め方に関しては、デザインデータの完成、設計、樹脂や金属フレームの組み立て、塗装や二次処理の準備などの各段階でチェックポイントを設け、TOPPAN様と随時確認しながら進めました。この進め方が、TOPPAN様の不安を軽減し、プロジェクトの透明性を確保していたと考えています。

これはデザインから製造までの一貫したサービスを提供しているARRKだからこそできる中間確認の手法とも言うことができるでしょう。

初号機の製作の後もご評価をいただき、有り難いことに全国のショールームへの展示のため、追加で3機のご注文を頂きました。2号機以降では、1号機で一部ご指摘のあったフィルム部分の光の見え方を改良し、バージョンアップ版として2号機、3号機、4号機を製作させていただきました。この場をお借りしまして深謝申し上げます。

ARRKは、お客様の想いを「形」にします

ARRKの強みは、多様なニーズに柔軟に対応できる能力にあります。従来の自動車メーカーのような明確な要件と製造工程を持つ顧客とは異なり、本案件では使用する商材と最終的な外観のイメージのみが提示されました。そのため、デザイン構想から具体的な製造に至るまで、ARRKが主導的に取り組みます。

このように、ARRKは製造だけでなく、顧客の曖昧なビジョンを具体的な製品へと変換することができます。デザインから製造のプロセスの全段階を通じて顧客のニーズを捉え、それを反映させていきます。少しでも興味を持っていただけましたら、お気軽にお問い合わせください。担当営業より折り返し連絡いたします。

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