三井化学株式会社 様

設計試作マイクロ波成形

三井化学xARRK 材料の知見や特殊な工法を活かした取り組み

ARRKは2018年に化学大手の三井化学グループの一員となりました。~三井化学が開発した最先端かつサステナブルな素材を、ARRKの技術でカタチにする~ 三井化学のグループ会社となってから現在まで、様々な形で共に開発を続けています。

三井化学株式会社とARRKによるコラボレーション

ARRKが携わらせていただいた、NAGORI™ SEKITEI MOUSEをご紹介いたします。

NAGORI™ SEKITEI MOUSE

意匠性と機能性

本製品では、陶器のような質感を塗装やフィルムではなくNAGORI™によって表現したいというご要望をいただきました。NAGORI™は熱伝導性による温冷感が特徴のため、塗装やラッピングを施すと表面に「層」が形成され、質感が失われてしまいます。そのため、素材そのものによる意匠性にこだわりました。製品コンセプトとしては「毎日触れるプロダクト」ということで、外観だけではなくマウス本来の機能を備える必要がありました。素材の良さを引き出しつつも、機能性を損なわないサンプルに仕上がっています。

ARRKが携わらせていただいたのは「設計」、「試作」、「組み込み」です。また、マウスとしての機能を備える必要があるため、リバースエンジニアリングと呼ばれる量産既製品の測定・リバース作業を、部品設計の前段階で行いました。ARRKではデザインを起こすところから携わらせていただくことも多いのですが、今回のプロジェクトではコンセプトとデザインはお客様からご提供いただいており、デザインデータから試作品を製作し、組み込むまでをARRKで担当しました。NAGORI™という素材をユーザーにアピールすることが目的であり、展示会への出展やWebサイトへの掲載に向けたモデルを数点製作しました。

ARRKの得意とする工法のひとつ ~マイクロ波成形~

本製品では成形を行う工法として、「マイクロ波成形」を採用しています。マイクロ波成形とは、特殊なシリコン型にペレットを充填し、真空パックで型を締め、加熱・溶融して成形する工法で、製作工程は「注型」とほぼ同様です。

3Dプリンタや注型といった工法では、使用できる材料が限定されるため、今回は選択肢にありませんでした。また、ブロック材からの削り出しでは、表面が単色でいわゆるマーブル調の風合いになってしまい、陶器や石の質感を表現するには適した工法とはいえません。射出成型ではマーブルマスターバッチを転嫁することで再現が可能な石目調の意匠性を表現するため、弊社で対応可能な工法を洗い出していく中で、最終的にマイクロ波成形が最適な工法として採用されました。

新素材での新しい可能性とARRKが誇る技術者の経験値

本製品では、マウスとしての機能を生かすために量産既製品のマウスを測定・リバースするところから設計データを立ち上げましたが、高精度な測定を行っても実際の現物とは誤差が生じるため、設計上のすり合わせは非常に重要なポイントです。

今回、マウス上下のケースにおいて、下側のケースは量産既製品のものを使用し、上側のケースをNAGORI™によって新たに設計しました。クリックする際のケースのしなりや曲がり、板厚の設定など、いただいたデザインデータを確認しつつ機能を付加していく作業は難易度が高く、市販の製品ではなく、サンプルに対してこういった機能を短期間で付加する作業は多種多様な開発に関わる技術者の経験を以ってなせる業なのです。

短納期でも難易度が高くてもお客様に寄り添って

本プロジェクトは、製品を売ることではなく、NAGORI™という素材を潜在顧客に「魅せる」ことが最大の目的です。それゆえに非常に短い期間での対応が求められており、プロジェクトの初期段階では、陶器や石を表現するうえでお客様の求める質感がなかなか実現できず、塗装やフィルムといった表現方法を打診せざるを得ない状況に置かれました。しかし諦めずに試行錯誤を繰り返し、ペレットを流動させずにドットを表現できたことでお客様の求める質感が実現し、プロジェクトが前進しました。樹脂材そのものの新しい表現方法によって、価値を提供することができたと感じております。

コンセプトや素材価値の提案、工法開発を通じ、近年NAGORI™は、食器や雑貨、家電筐体などで採用が始まっており、一般の方々も適用製品をお買い求めいただけます。ご興味がございましたら、MOLp®のニュースサイトよりご確認ください。
https://jp.mitsuichemicals.com/jp/molp/news/index.htm

※NAGORI™ SEKITEI MOUSE は、2024年現在、ARRKの日本の展示会で実際にお手に取ってご覧いただけます。

本プロジェクトのように新素材を使った開発や、リバースエンジニアリングはもちろん、少量のものづくりが必要となった際の企画からローンチまで、どのように考え、どの部分を協力させていただけるかなど、お気軽にご相談ください。お客様の工数や納期などをしっかりとヒアリングし、対応させていただきます。

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